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裁判所和解案に対する原告意見

平成17年(ワ)第25285号
原告 中野布佐子
被告 ㈱朝日熱学
        裁判所和解案に対する原告意見
                        2007年11月9日
東京地方裁判所民事第19部御中
(裁判所限り)

平成19年10月16日付裁判所和解案を頂き、検討を致しましたが、以下の点で疑問点があり、その旨意見を取りまとめて提出させていただきます。賃金における女性に対する差別は、職場におけるあらゆる差別を凝縮した形態です。そのため、本件を解決に向かわせるについても、一つひとつ考え方を整理し、長年にわたる就業生活上の差別が、原告にとって公正に報われたと実感できるような筋道を立ててすすむことが大事と考えておりますので、その点はよろしくご配慮の程、お願い申し上げます。

               記

1 月例賃金について
(1)1985(昭和60)年の格付け
被告会社における女性に対する賃金差別は1985(昭和60)年から始まったものではなく、それ以前から原告は女性であるがゆえに低い等級に据え置かれていたものです。1985(昭和60)年の時点及びその後の原告に対する取扱いを女性差別として差額賃金を支払うという以上は、1985(昭和60)年当時の原告の格付けと賃金から出発するのではなく、比較対象男性と同程度の格付けから出発するのが筋ではないかと考えられます。
原告の請求は西形社員の同年度の等級と同一であることを前提にしたものですが、西形社員が他の比較対象男性と比べて等級、賃金額とも相当程度低いことを考慮に入れると最低水準であり、随分控えめに賃金を設定したもので、それさえ認められないのは大きな疑問です。
(2)5級への昇格
 裁判所案は、原告が5級に昇格することを前提としない是正水準を設定しています。それは、西形社員が5級に昇格していないことを理由とするようですが、西形社員は本件提訴後の2006(平成18)年4月に課長代理の5級に昇格しています。西形社員も含めた比較対象者の男性4人の4級在級年数の平均は10年、目立って在級年数の長かった西形社員を除いた平均は7年ですが、原告が請求しているあるべき水準は5級に昇格する期間を11年としています。これは西形社員を含む平均在級年数よりも遅い昇格を前提としているものですから、原告としては、その水準が是正の最低線であるという強い意見を変えることができません。
(3)5級に昇格したことの確認条項
 原告は女性であるがゆえに低い等級にとめおかれたまま退職せざるをえませんでした。そのために労働者としての誇りを著しく傷つけられてきましたが、原告の人格的尊厳と働きに報いる解決として、和解に際しては、原告が5級に格づけられた社員として退職したことを確認していただきたいことを強く希望するものです。
(4)誤払いについて
繰り返し主張してきたように、他の誤払いの例は数百円、最大のものでも2500円程度です。これに対して原告に対してなされたと主張されている誤払いは数万円にも及ぶもので、これをミスとして片付けるとなれば、原告を働き手として軽視することはなはだしいもので、到底認めることはできません。賃金は、その人の大事さやその人に対する期待を金銭で刻印するものですから、この点について人間としての配慮を強くお願いするものです。

2 一時金・退職金差額について
 これらは月例賃金額がそのまま連動することになりますので、前項に指摘させていただいた点を考慮していただきますようお願いする次第です。

3 年金差額を含む解決金について
 裁判所和解案では退職金差額と年金差額等を考慮して解決金200万円とされています。退職金差額については前述のように別途認められるべきですが、さらに原告は性に基づく賃金差別という人権侵害を受けたことによる精神的苦痛に対する慰謝料として500万円を求めており、年金差額分を含めて(裁判所案によれば退職金差額分も含まれる)200万円はあまりにも低額であるという実感を払拭することはできません。年金差額も当然上記の月例賃金の差額が反映するものですから、それだけでも200万円程度の金額には及ぶものです。特に被告が長年にわたって原告を女性であるがゆえに賃金において差別したうえ、本件訴訟においてもその理由が原告の能力や勤怠などの勤務態度にあったかのような主張を繰り返して原告を貶めてきたことを考慮するならば、相当の金額によって慰謝され手しかるべきと考えるものです。
 原告とほぼ勤続年数が同等で、昇格状況は男性では最も遅い西形社員と同程度であったと仮定した場合の月例賃金、一時金、退職金差額でさえ、その合計は金1369万8466円、それに年金分の差額推定額200万円を加えると差額総額は約1570万円にも及びます。さらにそれに慰謝料を考慮したとしても(決して原告がこれを妥当であるとしているものではありませんが、)裁判所案による解決金も含めた総額が1270万円という水準については、原告のこれまでの働きと本件被告会社の原告に対する差別を想起したとき、これで問題を解決したと実感するには極めて遠く、改めて以上の点を汲んでいただくことを強く希望するものです。
by chakochan20 | 2007-11-09 16:13 | 裁判資料(41)

男女同一価値労働同一報酬


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