フジスター㈱男女賃金差別裁判

 この裁判は日本橋にあるアパレル業、フジスター株式会社において20年間勤務した原告が、在職中、女性であることを理由として、賃金、賞与、手当てにおいて男性従業員より低く抑えられてきたのは不法行為であるとして損害賠償を求めたものである。
2009年11月30日、東京地方裁判所に提訴しました。

・会社概要&原告職歴
フジスター株式会社 代表取締役社長 藤井本徳
会社設立 昭和28年(1953)9月21日
業種   繊維製品製造卸(アパレル企画)
社員   約40名 (2010年4月現在)
本社   東京都中央区日本橋小伝馬町4番地3号
子供服・婦人服・紳士服及びインテリア商品の企画製造卸し。(現在は婦人服・インテリアのみ)主に量販店に販売。

・原告の被告会社における職歴
平成元年フジスターに入社、20年間デザイナー、グレーダ―として勤務。平成21年60歳定年により退職。
平成1年(1989)5月26日入社 婦人服部配属
  デザイナー・パタンナー(ボトムス担当)3年4カ月
平成4年(1992)9月1日 開発部配転
  グレーダ―(紳士服・婦人服・子供服)8年5カ月
平成13年2月1日(2001)婦人服部配転
  デザイナー・パタンナー(数種類のハウスブランドを担当)6年10カ月
平成19年12月1日(2007)品質・開発部に配転
  グレーダー(婦人服担当)1年5カ月
平成21年(2009)5月9日退職

・フジスター㈱における男女賃金差別
1.月例賃金における差別支給
(1)昇給差別
 会社においては、基本給及び職務給は昇給管理により決定されることになっている。又、昇給は勤務成績を審査の上行うとされているが、実際の昇給金額は明白な男女間の分離があり、このような分離を来す理由が、女性社員の年齢・学歴・能力・職務内容・勤務成績の結果であるとは言い難い。(グラフ参照)
(2)昇格差別
 会社においては、権限と無関係な職位としてある程度勤務を継続した社員を「主任」に格づけて主任手当を支払ってきているが、男性社員であれば10年勤務を継続したところで「主任」に格付けし手当を支給するのに対して、女性についてはその適用から排除してきた。

2.手当の差別支給
(1)住宅手当
 会社の規定によれば、住宅手当が支給されることになっているが、支給対象者は、26歳以上で既婚者(ただし女性は戸主に限る)及び男性未婚者の持家及び借家居住者となっている。したがって、女性は未婚者は全員、既婚者であっても戸主でない限り、住宅手当の支給から排除されてきた。
(2)家族手当
 家族手当は、従業員本人の給与により生計を維持するものとして会社が認定した者について支給すると定められている。これによれば女性であっても、本人収入により生計を維持する労働者であれば、家族手当の支給がなされるはずであるが、女性はその支給対象から一律の排除されてきた。

3.一時金(賞与)の差別支給
(1)夏季及び年末一時金
 夏季及び一時金については基本給・職務給及び役職手当を合算した金額に支給月率を乗じて算定されるため、基本給・職務給・役職手当の性差別がそのまま一時金にも反映されることになる。
(2)決算賞与
 決算賞与は部門ごとの利益を社員に分配するという性質を有する賞与であり、算定方式はその都度きめられるが、男女間では明らかな格差があり、この格差を合理的に説明しうる根拠は存在しない。男性には数百万支給されても女性は数十万支給されたにすぎなかった。

 原告が主任に昇格して主任手当がついた。過去女性で主任になった人はいない。後から入社してきた男性が次々と主任に昇格していくのを見ているだけのこんな状況の中、女性正社員7名が労働組合を立ち上げ会社に通告。(2007年6月)フジスターには手当や昇格だけでなく賃金体系や社風にも男女差別があり、住宅手当・家族手当も男性のみに支給。上司に掛け合うと「女には手当は付かない」といわれた。

・これまでの流れ
不当労働行為
 原告は労働組合を会社に通告してから、わずか半年で当時廃部が噂されていた品質・開発部に配転され、又、当時の専務からは、あからさまな嫌がらせを受けた。そして、60歳定年をむかえ雇用延長を希望したが雇い止めになった。(2009年5月)他の定年の男性は雇用延長されている。これらは明らかな不当労働行為である。

提訴
 度重なる団体交渉の中で、手当の差別、昇格の差別の是正を勝ち取り、長い間有期雇用で働いてきた二人の正社員化も認めさせた。しかし賃金においては、会社は頑として認めようとしないため、原告は2009年11月30日、東京地方裁判所に提訴した。この裁判は、労働基準法104条(同法4条)に反する女性であることを理由に不利益な取り扱いがなされてきたとして損害賠償を求めるものです。

賃金グラフ
 裁判のなかで原告が入社した1989年以降に入社した社員全員の賃金台帳、及び人事調書の全てを請求し、これによりデータ処理をして賃金を分析、グラフ表示を作成。その昇給曲線は男女の差別賃金をはっきりと表している。

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「基幹職」と「補助職」
 会社は男性主体である営業職を「基幹職」、「女性職」である企画職を補助職とした上で同じ属性内での比較をすべきであると主張した。しかし、このような管理区分はそもそも会社で制度化されていたものではなく、同じ事務職であっても男性は基幹職で女性は補助職であるなど、賃金における男女別管理を基幹職、補助職と言い変えたにすぎない。デザイナー、パタンナー、グレイダーの仕事は、売れる服を大量生産するに至る過程の最も基幹的部分である。専門的な知識を要し、技術、技能の習得には一定の経験も必要とする。これをあえて「補助職」であるとするのは、女性の職務に対する偏見と差別である。

職務評価
 原告側は営業を「基幹職」、企画を「補助職」とした区別は男女差別であるとして営業、デザイナー・パタンナー、グレーダ―の職務評価を実施し職務鑑定意見書を作成し書証として提出した。(2011年12月)この職務評価はILOが2008年に発行した職務評価ガイドブックに基づき作成されたものである。
 職務評価は賃金関係資料、職務の内容を記述した職務記述書、原告と被告から出されて陳述書、仕事に関して提出された証拠の一切、職務評価の為に実施されたアンケート等を総合的にみて客観性を保つようになされた。
 その結果、両職種の職務評価点の比にはそれ程大きな差はなく3職種の仕事の価値は同等であると判断できるというものだった。加えて、客観的な社内での位置づけの説明や、職務や職種の分析のない職種別賃金という主張では合理的な説明が不能であること、企画職の中でも男女に差があること、会社の主張する卸売り企業であると言う実体を伴わない説明でしか職種の位置づけを説明出来ない中で営業職は男性のみ、企画職の殆どは女性という明確な性別職務分離がある事を考えれば、それは男女別賃金であると考えられるとして結論した。

証人尋問
 2013年4月に裁判官の交代があり、一人から三人の合議制になり、その裁判官のもとで証人尋問が二日に亘って行われた。
10月16日 会社側証人であるデザイナー、元専務
11月1日 職務鑑定者、被告のフジスター社長、原告
 尋問の中では、原告側の追及に、元専務や社長は言葉に詰まる場面が多々あった。会社は賃金表も未整備なままで、その運用は差別的、恣意的であったことが明らかになった。

判決
 2014年7月18日、東京地裁は、判決を言い渡した。
判決内容は役職手当、家族手当、住宅手当においては、違法な差別があったとし慰謝料を支払うよう命じ、しかし基本給や職務給、賞与については、不合理な性差別賃金であるとまではいえないとした。
判決では、営業職は全員男性、企画職は大多数が女性であり、男女間の基本給や職務給については、昇給率によって格差が開いていく傾向は認めながらも、職種が違うということで、性差別賃金であるとは言えないと否定したのである。
 職務評価については一定の合理性を認めつつも、「被告における評価という観点から適切であったといえるにかどうか疑問が残るところであるが直ちに職種の違いをふまえても合理性を有しない不当な差別にわたるとすることは出来ないという。
 また、「当該会社が企業としていかなる点を重視して従業員にインセンティブを与えるべきかという事柄は、企業の経営判断に属するものであり、当該企業の経営方針に照らし、一定の職種によりインセンティブを与えるという方針の元で決定することは自体は、それが職種の違いを踏まえても合理性を有しない不当な差別にわたると評価される場合に該当しない限り、違法とされるものではないという。」と書かれている。
 この判決では、基本給及び職務給は従業員の生活を支えるための基盤としての性格を有していると認めながら、会社において男女間の賃金格差が著しいことは判断の対象から除外している。
 判決は賃金差を職種の違いに逃げていますが、同じ企画職内でも、事務職内でも男女の賃金格差があり、正社員とは給与体系が異なる契約社員同士でも手当の有無はもちろん男女の昇給の差がみられる。
 判決には、会社が企業として一定の職種(営業)にインセンティブを効かせるのは企業判断とあるが、どの職種であっても男性は一定の賃金カーブの層をなしており、年齢及び勤続年数に対しての「年功賃金」であることを示している。「売上額」や「能力」によるインセンティブを利かせるという性質は全くない。
 月例賃金は、男性については職種を問わず、主たる生計維持者である事を年頭において年功的に昇給させて生活を維持するに足りるだけの金額を支給することとし、女性については職種を問わず、全員、生計維持者とは異なる労働者として賃金を低額に抑制してきたのである。
 フジスターの賃金格差は性差別であり、この判決を到底受け入れることは出来ず、2014年7月25日東京高等裁判所に控訴し、審議中である。
by chakochan20 | 2015-02-03 19:31 | ニュース(155)

男女同一価値労働同一報酬


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