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雇用のいま 福祉国家でクビになれば

 今冬、オーロラを見に行ったスウェーデンの「雇用のあり方」の記事を目にしました。どちらが良いかは別にして、日本の雇用との大きな違いにため息の出るような記事でした。

5月5日朝日新聞「ザ・コラム」有田哲文(編集委員)
 ― ええと、私はいま誰と会ってるんだっけ。会社の経営者? それとも経済学者?違う。労働組合のリーダーだ。
 スウェーデンで、大卒のホワイトカラーや専門職でつくるsacoという労組があり、その会長ヨーラン・アリアスさんと話していた。彼は、こんなふうに言うのだ。
企業がある事業から撤退し、働いている人のクビをきるとする。それでも、理由があるなら反対しない。そして多くの場合、理由はある。
 「企業は利益の出ない事業を続けることはできません。あるときには人をたくさん雇う、そして、あるときには解雇をする。企業には変化が必要です。」
 労働者の利益に闘うのが労組だと思っていたが、アイアスさんの話は何かが違う。労組らしくないところは他にもあった。給料を上げようとするのに団体交渉を重視しないのだと言う。それよりも、個人個人が会社と話し合いやすいよう、交渉のノウハウなどを教えている。
 でも、それじゃ、まるでコンサルタントじゃないですか。そう聞くと、彼は言った。「その通り。私たちの役割は大きく変ったんです。」
 雇用のあり方は国によって違うが、大きく分けて3種類あると思う。たやすくクビを切られてしまう米国や英国のアングロサクソン型。解雇がかなり難しい大陸欧州型。三つ目が、解雇のハードルは低いが辞めたあとの職業教育がしっかりしていて次の仕事へとつなぐ北欧型である。
 スウェーデンは北欧型の代表選手であろう。ここ3年で、製薬大手アストラゼネカが、国内の研究施設や工場を相次いで閉鎖し、3千人近い従業員を解雇した。その時起きたことを聞くと、たしかに独特のやり方である。
 大量解雇の発表があると間もなく、社内に特別の部屋ができ、政府関係機関である公的雇用サービスの職員がやってきた。クビになるまでの約1年間、どんな再就職先があるか、どんな職業教育が受けられるか、相談に応じるためだ。ハローワークが臨時の出張所を設けたようなものである。
 それにしてもこちらのハローワーク、かなりの手厚さである。たとえば研究職だったカリン・オルソンさん(43)は、高校の理科教師をめざして大学に通っている。学資は無料、生活費も支給される。「これから引退する先生が多いので、職がえやすいかなと。給料が下がりそうなのは悲しいのですが…」。無料の教育を上手く使って薬剤師になる人、小売業界に転じようという人もいる。
 思いがけない不運にあった人を救う社会の仕組みをセーフティネットという。しかし、スウェーデンの仕組みを間近で見ると、むしろ生態系と呼んだほうがいいように思う。不幸をできるだけ小さくし、人が生きていけるようにする体系がある。
 働いてもいなのに、会社が1年とか2年とか、辞めた人に給料を払い続けている。労組との話し合いで決めたことで、もし出し渋れば、悪評がたって後々いい人材がとれかくなるのだという。経営者団体と労組がお金を出し合って人を雇い、再就職に向けたアドバイスをしている。アストラの場合はさらに、地元の大学や慈善家が力を合わせて研究施設の建物を買い取ってしまった。元従業員の中から何十人もの企業家が生まれ、そこを根城にしている。
 そして何より「やり直し」を良しとする風習がある。もともと勤め先を変える事で昇給する人が多い転職社会なのだ。
 アストラを離れ、職探しを続けている1人、ペーテル・アナスさんは言う。
 「ストレスがたまります。でも、前向きにとらえれば、自分がやりたいことは何なのか、考える機会でもある。僕の場合、日本文化が好きだから、日本の会社に入れたらいいなと思っている。いま47歳。まだ大丈夫です」
 生態系の常で、これは変化を続けた結果でもある。労組だってかつては、ただただ戦闘的だった時代があった。失業手当の見直しなど、変化は今も続いていて、賛否の議論も止まることがない。

 北欧型とはかなり違うが、日本には日本の生態系がある、というか、あった。正社員、長期雇用、年功賃金が真ん中にあり、何処へ転勤させられても文句の言えない空気が絡みついていた。中小企業や外資系企業での働き方はやや違っていて話は単純ではないが、中核にはそれがあった。
 そして、このシステムが崩壊しつつあることは、いまや明らかである。
 企業が人を抱え続けるのはもう無理だ。だから解雇しやすくしよう、という議論が出ている。正しい部分はあるが、それだけでは社会が不安定さを増す。生態系を大きく手直しすること、場合によっては作り替えるくらいの姿勢、求められているのはそういうことだろう。時代の進む速度に合わせて。
できるだろうか。間に合うだろうか。-


 スウェーデンとの大きな違いは人口の差(日本1億2800万人、スウェーデン950万人)と給料の半分近くを税金として取られているので、ゆりかごから墓場までといわれる福祉国家では、国が面倒を見る義務が発生する。
 それと日本のように企業内労組(連合など)が会社の御用組合になり下がっているようでは、労働者の揉め事など何処吹く風、何の役にも立たない。
正社員の解雇をしやすくするという議論も、政府と企業の非公開の議論であり、簡単に金銭で解決、その後のこは知った事はないというのが彼らの持論。失業後のアフターケア制度設定もせず、人を物のごとく扱う。
 日本は先進国だと言い張る人もいるが、それはアジアのなかだけの事であり、欧米諸国の長い民主主義の歴史には足元にも及ばない。国際社会の勧告も守らず、日本固有の文化だとばかりに我道を行く日本は、精神構造において後進国と思われ、馬鹿にされても致し方ないように思われる。
by chakochan20 | 2013-05-05 15:24 | ニュース(155)

男女同一価値労働同一報酬


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