『逆戻りした女性議員比率から見える「ガラパゴス日本」のいま』

元朝日新聞記者の竹信三恵子さんが、WBROZA(朝日新聞社が提供する言説空間「WEBRONZA」(ウェブロンザ)のページ) に、『逆戻りした女性議員比率から見える「ガラパゴス日本」のいま』を掲載。

http://astand.asahi.com/magazine/wrbusiness/authors/2010052600025.html?iref=webronza

 今回の総選挙では、前回、戦後初めて1割を超えた女性議員比率が8%に下がり、ひとけた台に逆戻りした。
  ダボス会議の主催団体である世界経済フォーラムは、政治や経済などへの男女の参加度格差を示す「男女格差指数(GGI)」のランキングを毎年発表している が、日本は今年、135カ国中101位。特に足を引っ張っているのが女性国会議員比率だ。だが、今回の選挙で、低位脱出は望み薄となった。
 海外で は、隣の韓国も含む世界の約100カ国で、議席や立候補者の一定割合に女性に割り当てる「クオータ制」が導入されている。「政治家は男が先」という意識が 根強い社会では、女性は立候補も当選も難しい。このため、一部を女性に意図的に開放することで女性が活躍できる余地をつくろうという試みがクオータ制だ。 こうした制度にほとんど関心がない日本は、途上国からも追い抜かれ続け、その結果が101位という順位だ。
 真の問題は、「順位が低くてみっともな い」ことではない。人口の半分を占める層が議会で発言権を持たない状況では、その国の議会は構成員の意志を十分に反映できない。日本では、その結果、育児 や介護など女性が外で活躍するための公的な支えに税金が十分回らない。男性の雇用がこれだけ不安定化しているのに、厚生労働省が12月に発表した調査で は、仕事を持っている女性の半数以上が第一子の出産半年後に退職している。経済合理性からは考えられないこんな事態が起きるのも、女性が働き続けるための インフラに資金を向けるとの意志決定が、国会で進まないからだ。
 各国では、グローバル化で経済が不安定化し、男性の「大黒柱」中心主義では家計が もたなくなったことを機に、女性の職場進出が活発になり、この変化が経済をも救った。今年、国際通貨基金(IMF)は、女性の活用が日本の経済活性化のカ ギと提言し、経済協力開発機構(OECD)も、同様の勧告を行ってきたが、これらは海外の「当たり前」を日本にも提案したに過ぎない。こうして見ると、女 性が活躍できる社会づくりは、実は産業構造の転換期の隠れた大争点なのだ。
 そんな判断から、今回の総選挙後には、社会学者の上野千鶴子さんらのチームと、ジェンダー平等政策についての各党アンケートを行った(http://p-wan.jp/site/)。
 その中で気になったのは、今回圧勝した自民党が、女性の自己決定にかかわる政策にはほとんど反対、または消極的な姿勢を示していることだ。たとえば、女性の 地位向上のための国内推進機構の設置や、クオータ制の導入、性暴力・DV禁止などには消極的で、選択的夫婦別姓制や婚外子差別の禁止には反対と回答。公約 では「不適切な性教育」も行わせないとうたっている。
 前回の安倍政権下では、政権内からの性教育に対する激しい批判によって学校側が委縮し、性教 育の動きが極端に鈍った。こんな状態が再来すれば、女性は自身の体を適切に管理するための知識を得ることができず、望まない妊娠によって仕事の継続が難し くなることも考えられる。同党は、公約で「女性力の発揮」をうたっているが、女性が力を発揮することと、女性の自己決定権は切り離せない。
 セクシュアルハラスメントなどの職場での性暴力に対抗できなければ、女性は安心して働きに出ることもできないし、女性への賃金の不平等にノーを言えなければ、 女性は働く意欲を失う。性別にかかわらず、自分の人生は自分で決めていいのだと自信を持てること、自分で決めたら何かいいことがあったと信じられる基盤が あってこそ、女性は打って出ることができる。仮に閣僚や組織のトップに女性の数が多少増えたとしても、一般の女性の自己決定を応援する政策がなければ女性 は力を発揮できず、「女性力の発揮」の名の下に、便利に追い使われるだけだ。
 内閣府が投票日前日に発表した「男女共同参画社会に関する世論調査」 では「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」との考えに賛成する人が特に20代で、19・3ポイントの大幅増となったという。働く女性の非正規比率が 54%と半数を超え、セクハラも一向に減らない社会で、外で働くことに夢を描けなくなった若い女性たちと、先進国で最長の労働時間の下で男性の家庭回帰な ど想像さえできなくなった若い男性たち。少子化による労働力不足が課題となっているのに、こんな社会で経済は活性化するだろうか。
 外からの影響が遮断され、特殊な種が生き残ったとされるガラパゴス諸島の名を借りて、「日本のガラパゴス化」が取りざたされている。「ガラパゴス日本」から脱出するためにも、「女性力の発揮」という新政権の公約の行方を、慎重に見守る必要がある。
by chakochan20 | 2012-12-31 23:38 | ニュース(155)

男女同一価値労働同一報酬


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