最高裁 松下プラズマ偽装請負判決

今の日本の司法は労働問題に対し、どんなに労働者に利があろうとも、双方痛みわけの判決しか出さず、全面勝利などありえない。裁判所というところは必ずしも正義が勝つとは限らず、担当した裁判官によって白にも黒にもなる、摩訶不思議な世界である。
下記は働く女性の全国センターの栗田隆子氏の報告であり、この判決に対し一人の労働者として、疑問・感じ方が素直に書かれている。

『派遣労働問題における「重い」一日 』
2009年12月18日23:43
偽装請負 解雇男性が逆転敗訴

2009年12月18日(金)、多分この日は、今後の派遣労働という問題、そしてそこに関わる人間にとって「重い」一日として残されるだろう。その「重さ」を歓迎する人間と、嫌悪する人間とに別れる意味でも「重い」一日となるはずだ。

この日は実は派遣に関する三つの大きな動きがあった。
一つ。それは日本経済新聞に載った長妻厚労相のインタビュー記事である。
来年の通常国会への提出を目指す労働者派遣法改正案について、「激変緩和ということもある」、と延べ、法案成立後、施工までに三年程度の経過期間をおく方針を示唆した、というのだ。これではまた「景気がよくなった」ら放棄するということをやりかねないし、三年も待ってられないよ、という人がどれだけいることか。この「三年」というのは実に不気味な数字である。
二つ目は、派遣法審議会が厚労省で行われた。それは今後の派遣法改正に当たっての公益側、使用者側、労働者側の三者で行われる審議会である。
しかし、審議会では不安定雇用を生む一時的な「登録型の廃止」がうたわれるものの「二十六業種」「介護労働」等は、最初から対象外であることが謳われた。
あくまで「製造業」主眼の廃止である。
これでは、「エクセル」のひとつでもつかっていれば「事務職」としてみなされて、派遣に流し込まれる「期間工」が山ほど増えるんじゃないかという危惧を私は感じる。または、結局「請負」や「個人事業主」的な逃げ道を作ることが予想される方向での派遣法改正の審議が現在なされているのである。
この審議会。傍聴は誰でも可能である。時間のある人は、ぜひこれを見に行くことをお勧めする(たいていの仕事しているひとは無理なんだけど。でも派遣会社側はいっぱい来ている。彼らは仕事でこういうことができるってのが大きい違いだよね)。
さて、あともうひとつ、こちらはヤフーでもトップ級で扱われている裁判である。

パナソニック子会社の雇用義務認めず=解雇男性が逆転敗訴-偽装請負訴訟・最高裁
 パナソニック子会社の工場で働いていた元請負会社社員の男性が、「偽装請負」を内部告発した後に不当解雇されたとして、直接雇用の確認などを求めた訴訟の上告審判決が18日、最高裁第2小法廷(中川了滋裁判長)であった。同小法廷は、訴えをほぼ認めた二審大阪高裁判決の一部を破棄し、同社の雇用義務を認めず、直接雇用や未払い賃金支払いの訴えを退けた。男性側の実質的逆転敗訴が確定した。(時事通信)
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/economy/matsushita/

この傍聴に聞きに行こうとしたが、傍聴希望者多数につき、抽選。4人一緒にいた仲間のうち一人だけが当たり、抽選漏れの私達は外で、支援者達の演奏する沖縄のエイサー風の音楽などを聞きながら(音楽がこれほどありがたいものとは!)ふきっさらしの寒風に立っていた。
私自身は最高裁判所というところに立つのは初めてである。ギリシア神殿みたいなものものしい建物である。そんな建物の中からそれこそ例の筆書きで書かれた「勝訴!!」なんて文字も見てみたい、などというミーハーな気持ちも多分にあった。

待つ事30分以上、ぞろぞろと傍聴人たちが出てきた。抽選に当たった傍聴人のYさんに話をきくと「第一と、第三を棄却する・・とかむにゃむにゃいっているのよ」
「??」
そしてたまたま側にいた傍聴に参加したと思しき雨宮処凛さんにも思わずずうずうしく聞いてしまった。
「どうでした?」
「それが第一を棄却すると言うのだけれど、第一というのが何だかさっぱりわからなくて」
そのあと出てきたのが
「不当判決。損害賠償を認める」(と読めた)。
そのあと、しばらくして弁護団からの報告がなされた。
「主文第一、第三というのは、要するに彼の労働契約上の復元を求めるということ。それから彼の賃金請求権・それから元の職場で労働を行う権利、(使用者責任を問う)労働地位確認の部分が破棄をし、裁判所としてこの請求について終局的な判断をくだしたということです。
そのうえでわたしたちがもとめていた不法行為の損害賠償。ひとつは吉岡さんが、直接雇用になった後にリペア作業と言う他の従業員から切り離されて、一人ではけ口で作業されるというその部分については、一審からふくめて損害賠償を認めているし、さらに大阪高等裁判所では、直接雇用した後に2006年1月31日に雇い止めをした行為については全体としてみたときにその不法行為を認めている。大阪高裁の損害賠償の認容したところはそのまま認容をする。簡単にいうと、『労働の位置確認については棄却、リペア作業、および雇い止めを起こしたことについては、損害賠償請求を認める』と。
裁判官側の補足意見がありまして、雇い止めの不法行為の根拠付けとしては、吉岡さんが偽装請負を告発し、大阪労働局に申告し、直接雇用を請けたという一連の行為についての(松下側の)報復的な部分があることは損害賠償の根拠足りうるという、捕捉意見がなされました・・・。
しかし、私達が最も求めていた労働契約上の雇用主としての使用者責任は認めない、という点では不当判決であります。
しかし雇い止めは(使用者側の)あくまで契約上(の行為)だという判断をする一方で、雇い止め行為そのものに(使用者側の)報復的意図、違法の申告をしたことを評価するという、結論だけをみるとやや矛盾した内容になっていると感じましたが、この事件の最大の眼目は、一労働者を使用し、労務提供を受けていたということを、きちっととらえてそれに見合う雇用責任を認容するという、この点につきましては最高裁は沈黙をしたということになります。この矛盾において、労働者の申告にたいする企業の責任は認めざるを得なかったというかたちで今後それを見据えた上で全面的な支援をしてゆきたいと思っています。」
 確かにこれは、傍聴席にいても「きょとん」となるだろう。
 しかし要するに「酷い行為をしたその「酷い」ことは認めるが、企業は「酷い」ことをしてもいい。なぜなら「企業」だから」ということなのか?
 「企業責任」を負えない、「酷い行為」を改めるのではなく「お金」を払っておわり、ということなのだろうか。
 「企業」は「酷い行為」をするところ、そういう「酷さ」に対して裁判所は「沈黙」したということなのか?
 しかし、しかし、私はこの裁判を単純な「負け」とも言いたくないのだ。
それは、原告の勇気こそが、裁判所のヘンな「矛盾」を生み出したからだ。弁護団の「労働者の申告にたいする企業の責任は認めざるを得なかったというかたちで今後それを見据えた上で全面的な支援」と語るなかでのこの「申告」の重みはやはりある、ということを伝えなければ、と。その「重み」が希望につながるように伝えなければ、と。
この判決は、鳩山政権に変わったということも影響しているのかもしれない。確かにこれが「賠償」も出ないのだとしたら、結局政権が変わっても何にも変わらなかったという思いを生み出しかねない。「賠償」という判決は「ガス抜き」という見方も出来るだろう。しかし、そこからが「一歩」とも考えられるかもしれない、というか私達こそがそれを、彼にやらせてきた「何か」を私達の一歩としていかなければ、私達がこの「原告」を見捨てることになってしまうのだ・・・ほんとうに。
私は、原告、と言う呼び方がちょっといやだな、と思う程度に私はその方の知り合いと思っている。とはいえ、向こうは多分私のことを知らないと思うのだけれど・・・彼は今年の八月、暑い東京で行ったオンナ・ハケンの乱(デモ)にも来て、一緒に道を歩いてくれた。そんないきさつもあり私自身はこの報告を「中立」に出来る立場ではない。
だからこそ物静かな彼が、最高裁に向かって「最高裁、どんな判決をくだしたのか、意味が分かっているのか?」と叫んだとき、この叫びをつたなくても書かなければと思った。
拙いからこそ出来る報告がある、と思って今日はこれを書かせてもらった。

読んでくれて、ありがとうございました。
栗田隆子
ーー追伸
この文章での「長妻厚労省」発言の三年間の猶予期間・・・については、既に同日の「公益委員案骨子」で提出されている!このpdfファイルの3ページ目に
「ただし、1.2については、公布の日から3年以内の政令で定める日とする」・・・と。
http://files.acw2.org/091218.pdf

私も会員としてコミットしている働く女性の全国センターhttp://acw2.org/は、手前味噌ですが、こういう資料をいち早く提出してくれるかなり素晴らしいNGOです(^^)
mixiで宣伝行為は禁止されているので、こう、ほのめかしてしまってナニですが・・・。でもこのNGOにご関心お持ち頂ければ幸いです。
ーーーーーーーーーーーーーーーー以上 送信ヤマグチ

判決文
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=38281&hanreiKbn=01

下記は弁護団声明
PPDP偽装請負事件最高裁判決にあたって
        2009年12月18日
          被上告人(一審原告)吉岡力 氏 弁護団
 本日、最高裁は、PPDPの雇用責任を認めた大阪高等裁判所の判決を破棄し、吉岡氏の地位確認請求を棄却する不当判決を下した。
 判決は、PPDPが吉岡氏を指揮命令し、労務提供を受けるという労働契約上の使用者として振る舞ってきたPPDPの雇用責任を認めた大阪高等裁判所の判決を覆し、PPDPと労働者の契約関係を否定し形式上の雇用主である請負会社の契約関係を理由にPPDPの雇用責任を不問にする判断をした。かかる判断は、広く製造業で偽装請負等の違法な就労状態が継続している企業の責任を放置する結果を招くものであり、実際に労働者を使用している派遣先(発注先)企業に対し、労働者に対する契約上の使用者責任があることを免罪するものである。現在の雇用情勢に対する問題意識を欠いた判断であって到底容認出来ない。
 吉岡氏は、製造業であるPPDPによる偽装請負に対し2005年5月26日、全国に先駆けて、大阪労働局に対して是正申告を行い、就労先企業であるPPDPに対して直接雇用を求めた。しかるにPPDPは、いったんは直接雇用をしたものの、吉岡氏を帯電防止設備と称して黒いテント内で作業させることで、他の従業員から隔離し、竹串でディスプレイ画面に付着した不純物をこそげ落とさせるというおよそ前時代的で不必要な業務に従事させ、精神的・肉体的苦痛を与
えた上、その事に対する吉岡氏の抗議も無視し、契約から僅か5か月後の2006年1月31日をもって吉岡氏を雇止めにしたという不当なものであった。
 2007年4月26日に言い渡された大阪地裁判決は、PPDPの雇用責任を認めず、嫌がらせ行為に対する慰謝料のみを認めた。控訴審の大阪高等裁判所は、2008年4月25日、大阪地裁判決を変更し、PPDPの雇用責任を認めると共に解雇行為に対する慰謝料も認めるものとなった。
 しかし、大阪高等裁判所の判決にも関わらず、偽装請負、違法派遣はなくならず、2008年末、多数の労働者が大量の解雇される派遣切りが横行した。
 本日の判決は、このような社会状況の下で、違法行為を行った企業の雇用責任を司法が積極的に認めていくべきであるという労働者の声に背を向けるものであり、到底容認できない。
 しかし、他方で判決は、吉岡氏に対する嫌がらせ行為に対する賠償だけでなく、有期5か月での雇い止め行為について、「雇い止めに至る上告人の行為も、上記申告以降の事態の推移を全体としてみれば上記申告に起因する不利益取扱いと評価せざるをえない」として不法行為性を認め慰謝料を認容した。雇い止めが偽装請負を摘発に対するパナソニックの報復行為であると認定したものであり、違法の摘発に対して企業の報復を戒め、法律に則った行動を求めたと評価できる。裁判所が示した違法派遣を正す行為が正当であることを裁判所も認めざるを得なかったことを指摘しておく。
 私たちは、今後も、雇用責任をあいまいにした司法の姿勢を正す共に、吉岡氏の職場復帰を今後も支援していく決意である。 以上
          
by chakochan20 | 2009-12-21 23:38 | ニュース(155)

男女同一価値労働同一報酬


by chakochan20
プロフィールを見る
画像一覧